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2025年1月号 しっぽ特集

狐笛のかなた

 

上橋菜穂子/著

新潮社

 森に住む12歳の小夜(さよ)は、猟犬に追われる子狐の野火(のび)を助け、逃げ込んだ屋敷で少年・小春丸に出会う。数年後、隣り合う二つの国で争いが動き出し、彼らは再び出会うことに。〈聞き耳〉という特別な力を持つ小夜、霊狐である野火、屋敷に閉じ込められている小春丸。争いと共に、3人の運命が動き出す。

読み始めから、野を駆け抜ける小夜の息づかいや子狐のぬくもりが伝わり、物語に引き込まれること間違いなしです。里山の土ぼこりや小夜が時折感じる獣の匂いまでも、文面から漂ってくるかのようです。表紙には白く輝く美しいしっぽが描かれています。読み終えた後に本を閉じ表紙を眺め、再度ページを開きたくなる作品です。

おばあちゃんは猫でテーブルを拭きながら言ったー世界ことわざ紀行ー

金井真紀/著

岩波書店

 エチオピアでは、ヒョウのしっぽをつかむ?アルメニアでは、良いことをしたら水に流す?フィンランドでは、おばあちゃんが猫でテーブルを拭く? 著者が収集した、世界36言語の個性的なことわざを紹介。各国の歴史・文化にまつわるエピソードや、体験談を交えたエッセイをイラストとともに楽しく読むことができる、他にはない『ことわざ紀行』本。

言葉や言い回しは国によって様々ですが、ことわざに込められた意味や伝えたいことは、どの国も似ているものなのだと感じます。いろいろな国の人と触れ合う機会が多くなっている現代、会話の糸口になるようなことわざやエピソードを、この本で見つけてみませんか?

フォグー霧の色をしたオオカミー

マルタ・パラッツェージ/作 杉本あり/訳 Naffy/イラスト

岩崎書店

 ストリートチルドレンのクレイは、仲間と共にロンドンのテムズ川で泥あさりをしている。拾い集めたものを売り、たくましく自由な日々を送っていた。そんなある日、街にやってきたサーカス団の檻の中で、銀色に輝くオオカミと出会う。その美しさに一目で心を奪われたクレイは、オオカミをフォグと名付け、森へ返す決心をする。

クレイはただひたすらフォグを森へ返すことだけを考えて行動します。テムズ川での仲間との心温まる日々を捨ててでも、フォグを助けたいというクレイの勇気と決心に胸を打たれ、どうか生き延びて欲しいと祈らずにはいられませんでした。ハラハラドキドキする逃走劇のシーンは手に汗を握ります。フォグは森へたどり着くことができるのでしょうか…?