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2025年4月号 名探偵特集

金環日蝕

 

阿部暁子/著

東京創元社

 引ったくり現場を目撃した大学生の春風(はるか)。被害者は顔見知りの老婦人小佐田サヨ子だった。仕返しを恐れたサヨ子は「警察に届けるつもりはない、忘れて欲しい」と言うが、偶然現場に居合わせた高校生の錬(れん)と二日間だけの探偵コンビを組むことにした。犯人が落としたストラップは春風の見覚えのあるもので、どうも同じ大学に通う人物らしい。

 読んでいるうちに思いもよらない方向へとストーリーが進み、登場人物それぞれの生い立ちや心の傷に切なさが募りました。数々の伏線が徐々に繋がりだし、明らかになる様はとても読みごたえがあります。現代社会の闇がダークに描かれていますが、春風のラストの決意に感銘を受けました。

助手が予知できると、探偵が忙しい[1]

秋木真/著

文藝春秋

 閑古鳥が鳴くほど暇な「貝瀬探偵事務所」。事務所のソファで昼寝をしていた探偵・歩の元に、自身が殺される予知を視たと語る女子高生・柚葉が訪れる。面倒な依頼が舞い込んできたと断ろうとするが、ふと育ての親である叔父の言葉が頭によぎる。『困っているヤツを放っておくなよ、歩』叔父の言葉が気になった訳ではないが、仕方なく柚葉の依頼を受けることにした・・・。

 探偵の物語で未来が見えてしまうのは、結末がすぐに分かって面白味に欠けるのでは・・・と思いますが、予知できるのが断片的なものというのがこの作品のミソです。断片的な情報から調査をどのように行うのか、少し変わった探偵×バディ小説はいかがでしょうか。

少年少女のためのミステリー超入門

芦辺拓/著

岩崎書店

 今なお人気のミステリー、図書館にも本屋さんにも色々な種類があふれかえっていて、どこから手を付けたらいいかわからないあなたへ。「緋色の研究」「獄門島」など全8冊をミステリーの歴史の流れとともに、時代順に紹介する。各作品の著者の生い立ちにも触れ、作品の時代背景もわかりやすく紹介されている。

 人間味あふれる著者紹介で、作家本人にも興味がわいてくる内容となっています。アガサ・クリスティーと横溝正史の共通点…気になる方は要チェックです。また、コデックス装という製本方法がとられていて、本が開きやすいので是非手に取ってみていただきたいです。

 年代順に読むのもよし、気分で読み進めるのもよし。あなたのお気に入りの本が見つかりますように。