おすすめの本

「森が育むもの」

  • 掲載日:2024年11月15日
 森の中では植物のみならず、人間を含めた多くの動物たちが互いにつながりながら生きています。そんな森の営みを感じられる本を紹介します。
樹木たちの知られざる生活
森林管理官が聴いた森の声
ペーター・ウォールレーベン/著 長谷川圭/訳
早川書房
     
 
この本の目次には「友情」、「社会福祉」等の言葉が並び、私たちが持っている木のイメージからすれば、擬人的な表現だと感じられるかもしれません。しかしこの本を読んでいくと、樹木は森の中で他の木や様々な生き物と情報のネットワークを形成し、助け合いながら住みやすい環境を作って生きていることがわかってきます。森の中の風景を見る目がきっと変わってくることでしょう。
雨降る森の犬
馳星周/著
集英社

 
父親と死別し母親とも離れて暮らすことになった中学生の雨音が、信州立科の伯父の元で犬のワルテルや周囲の人々とふれあい、時に葛藤しながらも次第に信頼関係を築いていく物語です。物語の序盤にタイトルを表わすような風景が現れます。雨が降っても体に当たらないほど鬱蒼と茂った樹木、森の中を流れる霧、やがて雨が弱まり主人公を照らす光芒、それらはあたかも周囲に見守られながら成長していく今後の主人公の先を象徴しているかのようです。
 
絵本作家の森のいえ便り
Accototo/著
幻冬舎

 
絵本作家accototoさん一家の軽井沢での生活を綴ったエッセイです。自然を求めて移住する家族の本はいろいろありますが、エッセイと写真と楽しい絵本が一緒になっているところに著者らしさが出ています。浅間山麓の森の家には種々の鳥や虫、獣たちが現れ、四季がダイレクトに感じられます。こうした刺激を受けて、子どもたちも自由に想像を広げて育っていくようで、彼らの発想の面白さが本の中の「山の種」などのお話に現れています。